Vol.6あれから10か月...日南市夫婦円満都市推進プロジェクトのその後
「家事ギャップ」解消の先に、夫婦円満は確かにあった!
ただいま。
思わずそんな言葉がこぼれる。
家事と音楽、そして夫婦円満をこよなく愛する男、KJだ。
2016年8月、宮崎県日南市とLIONが共同でスタートした「夫婦円満都市推進プロジェクト」。我々はLIONの調査から浮き彫りになった夫婦円満を阻む「家事ギャップ」を解消し、夫婦円満を目指すためのプログラムを、日南市の夫婦に届けてきた。
もちろん、自信はある。
がしかし、そこはちゃんと確認が必要である。
そんなわけで久しぶりに日南市へやってきた。
その目的は、最初にプログラムを体験してくれた3組の夫婦に再会し、その後、本当に夫婦円満に向かっているか?ということを確認するためだ。
楽しみでもあるが、ドキドキでもある。
感謝はLINEで忘れずに。
次のライフステージに向かう若い夫婦の絆~川口夫妻の場合~
川口夫妻インタビュー
最初に再会したのは、当時新婚1年目だった川口竜平さんと、光さんご夫妻。
まず、妻の光さんが口を開いた。
「取り掛かるタイミングは確実に早くなりました!食器洗いも手際よくスピードアップしたし、全体的に家事を積極的にやってくれるようになったんです」
おお!これはうれしい話!さらにうれしい話が続く。
「赤ちゃんができまして…今は少し落ち着きましたけど、ご飯も食べられない日が続いて、本当に動けなかったんです。仕事も休職して、ほとんどソファーにいました。そういう時に夫は、私が必要なものを何も言わなくても持ってきてくれるんです。リモコン、携帯、水、この“3種の神器”がスッと私のところに届くみたいな(笑)」
なんて甲斐甲斐しい!これについて夫の竜平さんは。
「以前だったら、気が付かなかったと思います。プロジェクトに参加したことで、気づいたことがたくさんありました。今でも、その時の気持ちを忘れないように冷蔵庫にはLideaの写真を貼っています」
実は、川口家。妊娠以外にもいろいろと環境が変わったという。
夫の竜平さんが転職し、なれない仕事へのストレスもあったという。
そんな中でも、夫婦円満のために家事を頑張ってきた竜平さんの励みになったのは仕事中に届く妻からのLINE。
「仕事で大変な時に、ふと携帯を見ると妻から“ゴミ出ししてくれてありがとう”とか届いているんです。やったことを気づいてもらってうれしいし、仕事中でもまた頑張ろうという気持ちになります」
これについて光さんは。
「ほめたり、感謝の気持ちを伝えるのは、やっぱりちょっと頑張らないと出来ないことだと実感しています。でも、このプロジェクトで“伝えることの大切さ”がわかったので、忘れないうちに、気づいたときに伝えなくちゃ!と思って夫が仕事中でもLINEするようにしています」
なんて、順調な展開。うれしい限りである。
問題はこれから。子どもが生まれるとおのずと生活が変わっていくことになる。
そこに向けての心構えを夫の竜平さんに聞いてみた。
「これから絶対に大変になっていくと思う。それでも、今のように大事なことを忘れないでやっていこうと思います。その心構えはできています」
柔和な中にも力強い決意を語る姿は本当にたくましいものだった。
新たなライフステージに向けて、二人なら大丈夫、そう感じさせてくれた。
シンクの食器と目が合う。
結婚10年目で改めて知る自分のこと、パートナーのこと~高橋夫妻の場合
髙橋夫妻インタビュー
続いてやってきたのは、高橋悟さんと三佳子さんご夫妻。
結婚10年という節目を迎えた二人は、その後、「家事ギャップ」について話し合ったことはあったのだろうか?
「いやーすごい影響がありましたよ。あれから2週間くらいは毎日家事ギャップとかほめることとか、ずっと話し合っていました。もう何かにとりつかれたみたいに。」
夫の悟さんは、そういって笑った。隣の三佳子さんも同じように笑っている。
どうやら、プロジェクトを通じて二人が感じたことにはギャップが少ないようだ。
「夫は農業という仕事柄、忙しい時期が集中するんです。もうそういう時は、食器洗いどころじゃない。それは理解しているので、何も言いませんでした。そしたら、少し仕事が落ち着いた時に、自分から食器洗いをはじめて。これはびっくりしました」
三佳子さんからの評価は高い様子。
自分のこだわりが強い悟さんがなぜそのように変わったのだろう。
当の悟さんはこう語る。
「夜、ご飯を食べ終えると、妻が子どもたちをお風呂に入れに行くんですけど、ふとリビングでくつろごうと思って座ると、食器と目が合うんです。洗ってくれ、という感じで(笑)」
食器と目が合う!!そんな話初めて聞いた!
「もうそうなると、やらないと気が済まない。なんでしょう、この感覚は」
それほどまでに心の深いところにまで届いていたのか・・・
とはいえ、気になるは、その食器洗いがちゃんとできているか?という部分である。
「もともと、今回はよくぞ食器洗いをテーマにしてくれた!と思っていたんです。夫は以前も食器洗いをしてくれていましたけど、中途半端で。残りの面倒な部分を自分がやらないといけないことがストレスで、ケンカの原因になっていました。でも今は、やり方を夫婦で共有できて、ちゃんとできていようが、いなかろうが相手の気持ちが考えられるのでケンカにならない。他の家庭のことを知れたことも大きかったかもしれません」
三佳子さんも認める実力。そんな中で今、悟さんが感じていることとは?
「ちょっとほめ足りないとは感じていますね。今だにやることにツッコミがいろいろ入るし。まあでも仕方ないかなと思って腹は立ちませんね。あとは食べ残しについてはまだわからないことが多い。この量は保存したほうがいいのか?保存するならどの容器に入れたらいいのか?ここはまだまだ勉強しないと」
歩み寄ったがゆえに次なる課題も浮き彫りになった高橋夫妻。何より互いに感じていることを口にする一方でケンカにならないという点は川口夫妻と共通している様子である。これからも二人三脚で進んでいく二人にとってこうして相手の頭の中を知ったことがいい方向に向かっているようだ。
食器洗いをする時間は「ゲイツタイム」
それぞれがレベルアップを目指して工夫し続ける~田鹿夫妻の場合
田鹿夫妻インタビュー
ラストは日南の太陽、田鹿倫基さんと知美さんご夫妻。いつも楽しそうな二人だが、
果たして、その後は?
「明らかにやり方がうまくなっていると思います。ゴミや水切りカゴもちゃんと片付けるし、自分よりもうまいかもしれません」
知美さんからほめる先制パンチ。これに対して倫基さんは。
「僕もうまくなったと思います。やり方を知らなかっただけだったんですね。おかげで今は、妻からダメだしをされたとしても、あ、そうだった!と思うので腹が立たない」
相変わらず調子よく答えてくれる倫基さん。そんな二人はプロジェクトを自らさらに進化させようとしていた。
「すごい!とか教えてもらったほめ方をそのまま使うと、わざとらしくなってしまうので出来るかぎりアレンジしようとしています。エネルギーは必要かもしれないけど、ちゃんと伝えることは大事なので」
なるほど。そういう部分は確かにあるかもしれない。
一方、倫基さんはまた驚くべき話をもってきた。
「食器洗いをする時間のことを“ゲイツタイム”と呼ぶようにしました。知ってました?あのビル・ゲイツも食器洗いをするらしいんです。気分転換とかリラックスするためらしいんですけど、僕もそう呼ぶことで抵抗がだいぶ減りました。今では、家に帰ってくると、最初にシンクを覗いて、残っていたら、よしやるぞ!となりました」なんという変化!これについては知美さんも絶賛のご様子。
「夫は向上心が高くて、レベルアップという言葉が大好きなんです。だからこそ、一回足を踏み入れるとそのレベルを上げるために頑張るタイプ。ビル・ゲイツの情報もきっと、このプロジェクトに参加したから見つけることができたものだと思います。最近は、洗濯に興味があるみたいで、私の洋服のたたみ方を聞いてきます。次のレベルアップが楽しみですね」
10か月前に会った時から、前向きでポジティブな二人の夫婦漫才ムードに変わりはない。ただ今は、その向かう先に、協力して夫婦円満を実現することが感じられた。そのためにいろいろな工夫をすることでは共通する二人。これからも楽しそうな姿を見ていたい。
キーワードはやはり「ありがとう」
3組の夫婦に再会して話を聞くと、共通して出てきたのが「ありがとう」の重要性。LINEで感謝を伝えるという川口夫妻だけでなく、高橋夫妻も、田鹿夫妻も、口を揃えて「今までよりも、ありがとう、と言うことは増えた」と話し、一方で「ありがとうと言われることはうれしかった」と言っていた。これぞまさに、日本ほめる達人協会の松本講師が言っていた「感謝ボメ」に他ならない。我々は、正しい家事のやり方、互いの気持ち、そしてほめ方を学ぶことで、確実に夫婦円満には近づけると確信できた。
夫婦円満都市推進プロジェクトはここで終わりではない。
さあ、次はどんな夫婦を円満に導くことが出来るだろうか?
To be continued…
リビングケアマイスター
杉本 美穂
すぎもと みほ
家事関連の製品企画、マーケティングを約20年、生活者向け講習会などを約10年経験してきました。
毎日大変な料理や食事の後片付けなどを手早くラクにできるように、わかりやすくお伝えしていきます。