Vol.3家事ギャップ解消に向けたトレーニング開始!
ステージ3:家事ギャップ解消(妻編)・ほめるトレーニング
さて、夫たちが「へー」「ほー」と感嘆の声を挙げまくっている一方で、妻たちはというと、やはり「へー」「ほー」と感嘆の声を挙げていた。
夫とは別に彼女たちが移動したのは視聴覚室。目の前には、昨日から気になっていた謎の男が立っている。
「今日、皆さんには“ほめ達”になっていただくのが目的です」
突然のことに妻たちは事態を呑み込めていない。それもそのはず。いきなり“ほめ達”と言われてもピンとこないのは無理もない。松本講師は続ける。
「“ほめ達”とは“ほめる達人”。私は一般社団法人日本ほめる達人協会の認定講師をしています」
前述したが、LIONの調査結果で、夫が家事に前向きになれない理由の第一位は「やっても文句を言われること」。もし妻たちのかける言葉がネガティブなものからポジティブなものへ変われば、夫の意識と行動も変わるであろうという仮説の元、いよいよ妻たちに対する“ほめるトレーニング”が始まった。
そもそも“ほめる”ということがどういうことなのか?
「“ほめる”とは、人、モノ、起きる出来事の価値を発見して伝えること」。このことを踏まえ、まず一つのワークに取り組んでもらった。
「自分が言われてうれしいほめ言葉を、できるだけ多く書き出してください。」
価値を発見して伝えてあげるほめ達が、まず誰の価値を発見するかというと、自分自身。自分のことをうまくほめられない人は、周りの人をなかなかうまくほめられないという。
また、このワークでは自分がほめ言葉のボキャブラリーをどれだけ持っているか確認できるそうだ。
「うーん…、なんだろう?」
「あんまり考えたことないな…。」
妻たちは悩みながら、紙に書き出していく中、タイムアップ。
松本講師がこのワークで伝えたかったこと。それは、誰にでも、ほめてもらいたい部分や、事柄が10や20はある。そこをほめてあげているか?ダメだしばかりしてしまっている相手にも、ほめられたい、認められたいことがある。そして、ほめるところがない、と思ってしまっている相手にも、実はほめるところはあるはず。ということに気づくこと。
これには妻たちも、なるほどと言った表情に変わった。さあ、ここからが松本講師の真骨頂。具体的なほめ方について、メソッドが次々と語られる。
まずは一つ目、「ほめる時は具体的に」。“あなたが好き”ではなく“あなたの〇〇が好き”のようにより具体的な例を入れる方が何をほめられたのかが伝わりやすいということ。
二つ目、「言葉をポジティブに変換する」。同じ出来事でも、見方を変えるだけでほめる対象になる。例えば、川口夫妻の場合、妻の光さんは夫の家事を“遅い”と言った。しかし、これも見方を変えると“時間をかけていて丁寧”とも言える。そのことを指摘された光さんは思わず苦笑い。
そして次のワークへ。
「今、この人ほめたくない、というのは置いておいて、以前にこんなことをしてくれた!というご主人がしてくれてうれしかったことを思い出してみましょう。」
一つ目のワークよりも悩む妻たち。精いっぱいご主人のことを思い出してみるが、なかなかいい思い出が…。あっという間にタイムアップ。
そしてそれぞれの思い出を発表していく。このワークで一番苦戦していた高橋夫妻の妻、三佳子さんが、当時のことを思い出し、言葉に詰まりながら話してくれたこと。
「まだ、東京にいた時の話なんですけど、仕事にも人生にもすごく行き詰っている時があって、夫にも詳しくは話していなかったんです。その時、夫がギュッとしてくれて、何も言わずに…。」
忙しくて余裕が無いとき、どうしても目の前にあるマイナスな部分に目がいってしまいがちだが、かつてのいい思い出を振り返ることで、本来持っていたプラスの部分を見つめ直すことができるという。
そしてトレーニングの最後に松本講師からほめ達の必殺技ともいえる、すぐに使える言葉が伝授される。
それは「ほめ達が口癖にしたい3S」。「すごい!」「さすが!」「すばらしい!」の3つの言葉を使うことで、場の空気が変えることができる。そして、これを言うと、言った本人も前向きな気持ちになれる。まずは、ほめる姿勢を作るために口癖のように使うことがオススメだ。さらに、そこに加えて、非常に使いやすい言葉を2つ。
相手が思わぬことをしたり、今までなら「そうじゃないよ!」と言ってしまいそうな時、使える言葉「そうくるか!」。
そして、突っ込んでアドバイスしたり、こうしてほしいと伝えたいときに聞く耳を持たせる言葉「惜しい!」
そんな必殺技を聞いた妻たちに笑顔がこぼれる。きっとそれぞれ思い当たるところがあったのだろう。しかし、最後の最後で田鹿夫妻の妻、知美さんから質問が投げかけられる。
「あの…、ウチの夫、ほめると調子に乗るんですけど、どうしたらいいんですか?」
皆、爆笑。そこにいる全員の頭に、夫の倫基さんのドヤ顔が浮かんだ。
「それはもう、乗せてしまえばいいんじゃないですか?その後はちゃんと話を聞いてくれると思いますし」
最後に松本講師からの的確なアドバイス。応援に来てくれたライオンちゃんとにちなんぢゃ様とも記念撮影をし、初めの緊張感とは打って変わって和やかなムードの中、トレーニングは幕を閉じた。
これで夫たち、妻たち、それぞれに家事ギャップを解消し、夫婦円満となるために必要なトレーニングの全てが終了した。あとは夫婦ごとにがその成果を発表するだけだ。もうすぐ我々のプロジェクトの真価が問われる時がやってくる。
協力 一般社団法人 日本ほめる達人協会
リビングケアマイスター
杉本 美穂
すぎもと みほ
家事関連の製品企画、マーケティングを約20年、生活者向け講習会などを約10年経験してきました。
毎日大変な料理や食事の後片付けなどを手早くラクにできるように、わかりやすくお伝えしていきます。