乳由来タンパク質であるLFは多機能タンパク質として知られており、当社はこれまで、LFの機能の中でも、脂質代謝改善機能に着目し、研究を進めてきました。過去の研究※1では、胃で分解されず腸で吸収されるよう加工したLF腸溶錠を経口摂取することで、内臓脂肪およびBMI※2が低減することを明らかにしています※3(図1)。一般的に、内臓脂肪の量は、脂肪の合成と分解のバランスで決定され、脂肪の分解が合成の量を上回ることで、内臓脂肪の低減に繋がることが知られています。当社での解析の結果、LFの内臓脂肪低減機能は、経口投与した腸溶性LFが小腸で吸収され、内臓脂肪に到達し、脂肪の合成抑制と分解促進の両方に作用することで、内臓脂肪の低減に寄与することも明らかにしています※4-6。
図1で示す腸溶性LFの内臓脂肪およびBMI低減機能の結果を被験者ごとに再度解析しました。その結果、内臓脂肪およびBMI低減機能がみられる被験者(図1:赤丸参照)、低減機能が見られない被験者(図1:青丸参照)がおり、腸溶性LFの機能には、個人差がある可能性が示唆されました。そこで、腸溶性LFの機能の個人差に、一塩基多型(SNPs)が関与していると仮説を立て、ゲノムワイド関連解析(Genome-Wide Association Study;GWAS)により、腸溶性LFの内臓脂肪およびBMI低減機能と関連する新規SNPsの探索をしました※7。その結果、腸溶性LFの内臓脂肪およびBMI低減機能との関連が示唆されるSNPsを複数見出しました(図2)。
次に、腸溶性LFの内臓脂肪低減機能に関連する遺伝子上のSNPsの詳細な解析をしました。具体的には、腸溶性LFの機能に関与する遺伝子上のSNPsの中で、GWASの解析結果を元に統計学的に有意差のあるSNPsの数を再集計しました。その結果、腸溶性LFの作用に関連があり、脂肪合成抑制や分解促進作用を持つ遺伝子上に、内臓脂肪やBMI低減機能に関連するSNPsがあることを確認しました(表1)。このことから、腸溶性LFの機能発現の個人差に、SNPsが影響する可能性が示唆されました。
今回の研究成果から、遺伝子多型は腸溶性LFの機能の個人差に影響を与える可能性があることがわかりました。今後、様々な健康リスクや製品機能の個人差に影響を与える遺伝子多型を同定することで、個々人の体質に合わせた製品やサービス開発に繋がる可能性があると考えています。当社は、生活者一人ひとりの体質に合わせたウェルビーイングな毎日を実現する新たな習慣の提案を目指し、研究を進めていきます。
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