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柔軟成分入り洗濯用洗剤(おしゃれ着用)『アクロンスマートケア』に込められた「すすぎゼロ洗浄」技術

1.開発背景

当社は、生活者一人ひとりの快適で健康なくらしを目指した新たな価値を提供するとともに、持続可能な地球環境の実現に向け、環境負荷低減にも繋がる製品の開発を進めています。生活者のくらしに目を向けてみると、水や電気を使う家事も環境に影響を与える可能性があり、特に洗濯は、多量の水を使用するため、環境負荷が大きい家事の1つです。そこで、洗濯で使用する水を削減するため、水使用量の大部分を占める「すすぎ工程」に着目し、「すすぎ工程」をゼロにする洗浄(以下、すすぎゼロ洗浄)技術の実現を目指しました。

2.「すすぎゼロ洗浄」技術の開発

洗濯時の「すすぎ工程」は、「洗浄工程」後の衣類に付着した汚れや界面活性剤を落とす役割があります。そのため、すすぎゼロ洗浄を実現するためには、洗浄中に汚れをしっかりと落とし、さらに落とした汚れを再び衣類に付着しないようにすること、そして洗浄工程後の衣類に界面活性剤を残りにくくすることが必要です。そこで、界面活性剤の配合量を減らし、界面活性剤以外の機能成分を活用して洗浄力を向上させることを検討しました。機能成分には、汚れに効率よく吸着すること、汚れを包み込んで衣類に再付着するのをブロックすることの2つが性能として必要であると考え、この条件を満足する成分としてアクロンスマートケア成分を選定しました(図1)。アクロンスマートケア成分を配合した洗剤は、従来洗剤から界面活性剤濃度を半分に削減した場合でも、従来洗剤と同等レベルの洗浄性能があることを見出しました(図2)。

図1. 機能成分として選定した
アクロンスマートケア成分の概要

図2. アクロンスマートケア成分配合による
洗浄力の評価

また、汚れの再付着は、衣類の黒ずみを進行させる要因の1つです。従来洗剤では、界面活性剤によって汚れの再付着を防止していますが、今回、すすぎゼロ洗浄の実現に向け、界面活性剤の配合量を減らしたことから、界面活性剤以外の成分で、汚れを分散させる必要があります。各種成分を検討した結果、アクロンスマートケア成分を配合することで、従来洗剤から界面活性剤濃度を半分に削減した場合でも、従来同等の再付着防止能を有することを確認しました(図3)。

図3. アクロンスマートケア成分配合による再付着防止能の評価

3.洗浄メカニズム検証

アクロンスマートケア成分を配合することで、低界面活性剤濃度の条件でも従来洗剤と同等レベルの洗浄性能が発揮されたことから、アクロンスマートケア成分と界面活性剤が複合体を形成し、その複合体が皮脂汚れの主成分(脂肪酸)に効率よく吸着すると仮説を立て、検証しました。吸着は、化学反応を伴う反応熱が生じることから、界面活性剤とアクロンスマートケア成分の混合溶液に脂肪酸を添加したときの反応熱を測定しました。その結果、界面活性剤にアクロンスマートケア成分を配合した溶液に脂肪酸を加えると、発熱反応が見られたため、脂肪酸が吸着することを確認しました(図4)。このことから、界面活性剤-アクロンスマートケア成分-脂肪酸の3成分が、複合体を形成していることが示唆されました。さらに、この複合体は、脂肪酸に対して比較的高い界面張力低下能を有していることを見出し、複合体が新たな洗浄成分として働くことで、少量の界面活性剤でも洗浄性能が高くなることが示唆されました。

図4. 界面活性剤とアクロンスマートケア成分配合溶液に脂肪酸を加えた時の反応熱

4.汚れの再付着防止技術のメカニズム検証

界面活性剤とアクロンスマートケア成分の複合体が(以下、アクロンスマートケア成分複合体)、汚れとなる脂肪酸の分散性に寄与し再付着防止能を有すると仮定し、アクロンスマートケア成分複合体が脂肪酸の分散性に与える影響を検証しました。分散性は、各洗剤溶液に赤く着色した脂肪酸を添加し攪拌して、溶液中心部の赤さを吸光度で評価しました。その結果、低界面活性剤濃度条件下においても、アクロンスマートケア成分を配合することで、脂肪酸が長時間分散することを確認しました(図5)。

図5. 脂肪酸の分散性評価

以上の結果から、アクロンスマートケア成分を活用することで、「すすぎゼロ洗浄技術」を実現しました。

5. 本検討の成果

本検討で確立した「すすぎゼロ洗浄」技術により、洗濯時の水使用量削減による環境負荷低減だけでなく、洗濯時間の短縮による衣類のダメージ抑制や手軽な洗濯の提案が可能となります。本技術は、柔軟成分入り洗濯用洗剤(おしゃれ着用)『アクロンスマートケア』に応用されています。

研究発表

1) R.Takei, et al., 2023 AOCS Annual Meeting & Expo, 30 April to 3 May., Denver, USA

研究事例紹介

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