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製品の機能を引き出す会合体制御技術

様々な製品に応用される界面活性剤は、製品の中でミセルやベシクル、エマルションといった会合体を形成します(図1)。ミセルは、界面活性剤の親水基を水との界面に配向し、内部にアルキル鎖の疎水部コアを持ちます。また、ベシクルは界面活性剤の二分子膜構造であるラメラ相の球状粒子、エマルションは油のような水に不溶の成分に界面活性剤が吸着した粒子状の会合体です。

図1.界面活性剤が形成する様々な会合体

これら会合体は、疎水部に水に不溶の有効成分を取り込むことができ、製品機能に深くかかわっています。製品の機能を高めるために、最新の解析手法(図2)を導入して、会合体の分散状態や微細な内部構造の解析技術を強化し、その会合体の機能を制御する技術を深めています。

動的光散乱測定器
時間領域核磁気共鳴装置

図2.会合体の構造や機能の解析に用いる装置

1.柔軟剤使用時の香りを最適化するベシクルへの香料可溶化状態の研究

多くの香料は、会合体の疎水部に可溶化されます。柔軟剤には、仕上がった衣類の風合いを良くするだけでなく、好ましい香りを付与する機能も求められます。柔軟剤には、カチオン性の2鎖型界面活性剤が形成する会合体、ベシクルが応用されます。多くの香料成分は、ベシクルの二分子膜構造に取り込まれるので、香料を取り込んだベシクルが衣類に吸着することで香りが付与されます。その可溶化量を制御するためには、香料を取り込んだ会合体構造の把握をすることが重要です。小角X線散乱法を用い、各種香料の取り込み位置の詳細を明確にすることに成功しております(図3)1)

図3.香料可溶化量を変化させたベシクル二分子膜の電子密度プロファイル。(a)リモネン(LN)可溶化系、(b)フェノキシエタノール(PE)可溶化系。r(nm)は二分子膜中心からの距離、矢印は香料濃度に伴うピークの変化の方向を示す。Ρ(r)が負から正に転じる交点は、疎水部と親水部の界面までの距離を表す。

2. 香料カプセルの安定性と製品の使いやすさを両立するベシクル分散状態の研究

昨今では、香りの持続性が求められるようになり、微小な香料カプセルも利用されるようになりました。香料カプセルは比重が軽く、ベシクル分散液から素早く分離・浮上してしまいます。これを防ぐために、分散しているベシクル粒子をネットワーク状に配列させ、溶液全体を構造化する分散状態の制御技術が必要となってまいりました。ある種の高分子の分散粒子を併用することで、静置時にはカプセルの浮上を防ぐネットワーク構造をとり、そそぐときには流動するような、可逆的なベシクル粒子の分散状態制御に成功しました(図4)。この分散粒子による溶液構造の形成メカニズムも明らかにしております2)

図4.ベシクル粒子のネットワーク構造とその復元性

研究発表と投稿論文

1) E.Ohnishi, et al., "SAXSexcites", International SAXS Symposium 2017, 26 to 26 Sep., Graz, Austria
2) A. Miyajima, et al., Journal of Oleo Science , 68, (9) 837-845 (2019)

研究事例紹介

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