当社は持続可能な社会の実現に向け、サステナビリティ重要課題への取組みを進めており、その最重要課題の一つとして「健康な生活習慣づくり」を掲げています。その中で、すべての人がいつでもオーラルケアを行える機会を提供することを目指しています。この実現に向けて、“極限環境下”、特に宇宙での生活におけるオーラルケアの行動に着目しました。例えば、国際宇宙ステーションにおける水の使用制限は、地上での災害や水不足が深刻な地域の状況と似ています。この観点から、宇宙における歯みがきを快適な習慣へとアップデートする製品・サービスを開発することで、いつでも、どこでも、だれでも適切なオーラルケアを実践できる社会実現への貢献を目指しました。
本テーマは、当社が実施している、業務の最大15%で自由な研究テーマを設定できる取組みの中で推進されました。この取組みは、必ずしも本業に直結する必要はなく、研究員が"ちょっとやってみたい"と思う小さなアイデアに挑戦する機会です。部所横断で宇宙に対して同じ想いを持つ研究員が集い、テーマが立ち上げられました。
宇宙生活※1では、水は極めて貴重であり、洗髪や洗顔、歯みがきといった日常的な行動も超節水で行う必要があります。歯みがき後も水ですすぐことが難しいことから、これまでは口内のハミガキを飲み込むかタオル等に吐き出しており、不快感や口残り感が課題となっていました※2。
そこで当社は、この課題解決に向け、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策のアイデア募集」に応募し、泡のハミガキ「すすぎが簡単なハミガキ」を提案しました※3。
このハミガキは、一般的なペースト状ではなく、泡状となっており、泡の性質により、口の中全体に広がりやすいことに加え、口の中での泡立ちや口残りを抑えた設計となっています。そのため、泡をハブラシの上に乗せ、歯をみがき、そのまま唾液と一緒に吐き出すだけでも、使用することができます。また、地上と同じようにコップの水を使ってすすぐことができないため、後残りしにくい香味にも配慮しています。1本で500回程度の歯みがきが可能であり、最長半年にも及ぶISS(国際宇宙ステーション)での長期滞在でも、快適な歯みがき習慣を提供できるほか、将来の宇宙開発計画においても物資制限やコスト削減に貢献できると考えています。今後の宇宙開発においては、さらに長期間に渡って宇宙空間に滞在することが想定されており、より吐き出しやすい仕様にすることで口の残りの違和感のなさを改善し、宇宙空間におけるより良い歯みがき習慣の提供を目指していきたいと考えています。
今回提案したハミガキは、JAXAにおいて「国際宇宙ステーション(ISS)搭載可」と評価され、2022年10月~2023年3月の間、ISSに滞在した若田光一宇宙飛行士にご使用いただきました※4。若田宇宙飛行士から、「フォーム(泡)状のハミガキで、口の中隅々まで行き渡っている感じがします。無重力状態でも泡を歯ブラシに乗せやすいです。水がとても貴重なISSでこのような製品はとても助かっております。」とコメントをいただいております※5。
※1 国際宇宙ステーション(ISS)での生活
※2 JAXA編集,Space Life Story Book:https://iss.jaxa.jp/med/images/71532_story.pdf
※3 JAXA宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策のアイデア募集:https://iss.jaxa.jp/med/partner/71532.html
※4 JAXA宇宙生活/地上生活に共通する課題テーマ・解決策の結果報告について:https://humans-in-space.jaxa.jp/news/detail/001898.html
※5 JAXAデジタルアーカイブス「宇宙生活用品のすすぎが簡単なハミガキを紹介する若田宇宙飛行士」(https://jda.jaxa.jp/result.php?lang=j&id=c6e92db969e1f7a5dbccd1bcf56c411b)内の若田宇宙飛行士コメントより抜粋
本技術は、宇宙だけでなく、地上における災害時などの水不足環境下や医療・介護現場での口腔ケアなどへも応用可能と考えています。今後は、今回の取組みを通じて得た「様々な環境に応じたオーラルケアとは何か」を考える視点をもとに、あらゆる環境や状況に応じた適切なオーラルケア機会の提供に繋がる研究を進めていきます。
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