昨今の社会情勢により、生活者の清潔・衛生意識は一層高まり、手洗い回数は年々増加しています。当社の調査から、子育て世代の女性の多くは、バイ菌から家族を守るため、自分自身や家族の手をきちんと殺菌したいと考えている一方で、手洗いによる手の乾燥や手荒れを気にしていることがわかりました※1,2。
一般的に過度な手洗いは、水分の蒸散を防ぐ皮脂を必要以上に落としてしまい、肌(皮膚)の乾燥を誘発してしまうことが知られています。そこで当社は、キレイキレイの殺菌洗浄力に加え、手肌へのうるおい効果を付与したハンドソープの開発に着手しました。この具現化に向けては、キレイキレイの特徴である汚れ落ち性能のある石けん成分と殺菌成分を配合した組成に、手洗い後の手肌のうるおいを保つ吸着保湿技術の活用を検討しました。
※1 泡ハンドソープに関する意識調査(2023年8月、当社調べ、n=1,400)
※2 泡ハンドソープに関する意識調査(2023年10月、当社調べ、n=4,125)
手肌へのうるおいを保つ効果を付与するにあたり、一般的に保湿効果を有することで知られる「油剤」や「角質への浸透促進剤」等の活用を検討しました。その結果、これらの成分は水で洗い流されやすいため、活用が難しいことがわかりました。そこで、当社のボディソープで確立されていた石けん成分とカチオン性高分子で形成される保湿成分複合体(疎水性複合体)の活用を検討しました。石けん成分とカチオン性高分子は、静電相互作用により、水を巻き込みながら疎水性複合体を形成し、疎水性の皮膚にしっかりと吸着、水で洗い流されず、保湿効果を発揮することができます(図1)。
高分子は分子構造の違いで、柔軟性や電荷強度等が異なります。そこで、複合体形成時に、多くの水分を含み、保持することができる高分子を探索しました。石けん成分と候補となる高分子の複合体に、高湿度条件下で吸水させ、所定時間後の複合体重量を測定、変化率の大きさから水分を保持する力(水分保持力)を評価しました。その結果、高分子Aと石けん成分の複合体による水分保持力が最も高いことを確認しました。これは、高分子Aと石けん成分の複合体は、密な構造で空隙率が低いことから、水分が蒸散しにくいためであると推察しています(図2)。
高分子Aを配合したハンドソープ(以下、高分子Aハンドソープ)を使用した時の実際の手肌のうるおい保持効果を確認するため、高分子Aハンドソープでの手洗い5分後の皮膚水分量を測定しました。その結果、高分子Aハンドソープ使用後の皮膚水分量は当社従来品を上回ることを確認しました(図3)。
殺菌洗浄効果に加え、今回検討した手肌のうるおい効果を付与したハンドソープは、「キレイキレイ薬用ハンドコンディショニングソープ」として2020年に発売しました。今後も、本開発での知見を活かし、家族の清潔習慣に貢献する技術や手洗いに対する不具合を解決する衛生ケア製品の提供を目指します。
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