健常な毛髪の表面はF-layer
(図1)と呼ばれる脂質層で覆われています。毛髪が損傷を受けるとF-layerが剥離してパサツキ等の不具合が生じるため、脂質成分を補い不具合を解決するためにリンス剤等が使用されています。
近年、ヘアケア製品の開発のために毛髪の損傷や製品使用時の風合いに関する研究が盛んに進められ、毛髪表面のキューティクルという鱗状構造のめくれあがり(リフトアップ)等の形状の違いに関しては、様々な報告がなされています。我々は、手触りなど髪の風合いを支配する因子のひとつとして毛髪と毛髪の間に働く摩擦に注目し、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種である摩擦力顕微鏡(FFM)を用いて、キューティクル1枚の最表面の微細構造と摩擦の関係についてナノレベルでの研究を進めています。
FFM測定のプローブとして、金コートしたカンチレバーをオクタデカンチオール処理することにより毛髪の最表面と同等の化学構造を持たせた「毛髪モデルプローブ」を作製(図2)し、毛髪と毛髪の間のナノレベルの摩擦力の検出に成功しました。
この技術の応用により、毛根付近の発毛して間もない毛髪と、発毛後20ヶ月近く経過して生活紫外線などの外的刺激を受けて損傷した毛先の毛髪では最表面構造やナノレベル摩擦特性が異なることが明らかになりました(図3)。また、パーマ・ブリーチ処理によって損傷した毛髪表面が、リンス剤中に配合された各種基材によって修復される様子をナノレベルで評価することが可能になり、風合いに優れたヘアケア製品の開発研究に活用されています。
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