終戦直後の混乱がおさまり国民生活が少し落ち着いてきたとはいえ、文化的な娯楽、趣味・教養的な要素のある催し物や施設は少ない時代でした。
したがって、口腔衛生普及活動の一環としてライオン歯磨(株)が提供した各種催し物は、娯楽や文化に触れることのできる憩の場として受け入れられました。
ライオン歯磨(株)が初めて提供した催し物は、校庭や空き地で開催した屋外の映画会でした。
全国各地の夏祭りや海水浴場では、必ずといってよいほど映画会が行われています。
会場の設営を終えたライオン歯磨(株)映画班は、夕闇とともに三々五々集まってくる人々を案内し、商品の宣伝やサンプリングに大活躍をしたのです。
もちろん口腔衛生の大切さも訴えました。
1951(昭和26)年、初の民間ラジオ放送が始まりました。このラジオ放送開始とともに始まった番組に「バイバイゲーム」があり、ライオン歯磨(株)が提供していました。
「バイバイゲーム」とはクイズ番組で、出演者が正解する度に賞金がバイバイ(倍々)になりますが、不正解だと賞金がバイバイ(さようなら)するというもので、大変な人気番組となりました。
ライオン歯磨(株)は、この人気番組の公開録音を各種催し物の中で行っています。
写真の招待券は、1953(昭和28)年の第4回「若き女性の集い」のもので、「バイバイケーム」の公開録音と映画会とがセットになっています。
この時上映されたのは、石川達三原作、市川崑監督の「青色革命」でした。
講演会活動も口腔衛生に加えて、消費者の趣味や文化生活の要素を取り入れるようになって行きます。
例えば、1953(昭和28)年に都内の幼稚園や婦人会などに呼びかけて始めた「ライオン趣味の講座“婦人の集い”」があります。
これは
・こどもの歯の衛生を啓発する講演
・家庭婦人の日常生活を豊かにする趣味の講座
・懐かしの名映画鑑賞
で構成されていました。参加料はもちろん無料。
趣味の講座は、第1~3回は美容研究家山野愛子さんによる「美容のコツー実演指導」でした。
講座はいずれも各界一流の講師によるもので、他には以下のようなテーマがありました。
「おいしいパン食の戴き方」「家庭で手軽に出来る栄養料理一実演指導」「ピクニック向きの美味しいサンドイッチの作り方」「実用向きのハウスドレス、外出着を中心とした日本人に似合う色とデザイン」「生活を楽しくする夏の流行の取り入れ方」「お嬢さまから奥様までの個性をいかしたヘアスタイル」「秋から冬への新しいスウェター」など。
これらの講座内容は、今日のテレビ番組や女性誌の記事とよく似ていますね。
この会で上映された映画には、「別れの曲」「花嫁の父」「甦る熱球」「愛の調べ」「二人の青春」「可愛いい配当」などがあります。映画の歴史に残る名作の数々です。
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