ヒトは1日に約2万リットルの空気を呼吸、口や鼻から入った空気は、のどを通り気管を経て肺に入ります。こうして吸い込んだ空気には、ほこりやばい煙、カビ、細菌、ウイルスなどの異物が含まれています。空気の中の異物を肺まで届かないようにガードしているのが、咽喉から肺に至る気道の内壁を覆う粘膜と線毛です。
気道に入った異物は粘液で捕らえられ、その下にある線毛が1分間に約0.5~1センチメートルの速さで外へ向かって異物を移動していきます。咽頭へ戻された異物は、痰として体外に排出されたり、食道から胃に入り消化されたりします。
線毛運動が異物を運び出す様子は、大きな玉を人の手で次々と受け付きながら送っていく運動会の大玉送りに似ています。肺に入った異物が排出されるまではおよそ30分といわれています。だから、わずか直径1,000分の1ミリの線毛の動きが、外部から混入する異物から、身体を守るのにたいせつな役割を担っているのです。