もう1つ、1894(明治27)年の石鹸の資料を紹介します。
『牛乳石鹸』といえば、赤い箱に牛のマーク「牛乳石鹸」ブランドで有名な牛乳石鹸共進社(株)の商品ですよね。
ところが、実はライオン(正確には小林富次郎商店)の商品だったことがあるのです。寺沢孝吉という人が発明し、近孝堂が製造、小林富次郎商店が発売元となっていました。
左図版が当時の「商標広報」に掲載されたものです。
1894(明治27)年8月の「都新聞」に掲載された広告によれば、この『牛乳石鹸』は「…牛乳を凝結せしめて作りたるものなれば其清浄なるは勿論身体の栄養皮膚の健全を直接に補理するの能力あり…」とあります。
本当に牛乳が入っていた石鹸のようです。
その後、小林富次郎商店がどのような理由があって『牛乳石鹸』の商標を手放したのかはわかりませんが、大阪の佐藤貞次商店の手に渡り、そして昭和3年、今日の牛乳石鹸共進社(株)の前身である共進舎製造所が譲り受けています。
共進舎製造所はその後、いくたびかの変革がありましたが、1967(昭和42)年3月社名を現在の牛乳石鹸共進社(株)に変更しました。もちろん『牛乳石鹸』の貢献が大きかったからです。
小林富次郎商店がライオン歯磨(株)に変更した経緯と同じといえます。
ちなみに、小林富次郎商店が『ライオン石鹸』の商標を登録したのは、『獅子印ライオン歯磨』がよく売れるようになった明治40年のことでした。
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