ライオンは、知的財産に関する基本的な方針として、知的財産の創造、適正な保護、積極的な活用に努め、他者の知的財産を尊重し、不正に取得・使用しないことを「行動指針」で定めています。
知的財産活動の推進は、取締役会の監督のもと、経営直下に知的財産に関する専門部所を設置し、グループ全体の経営戦略に整合した知財投資の実行、知的財産権の適切な活用と情報開示を図っています。知的財産戦略立案や重要施策の進捗は、年2回、業務執行取締役を委員長とする会議で報告・議論し、取締役会・執行役員会での報告・討議を行っています。
当社の知的財産に関連するコアの強みは、特許権・商標権・著作権等の知的財産権にとどまらず、製造・評価方法(ノウハウ)やヘルスケアデータ等の無形資産に及ぶもので、この重要な経営資源を活用し、企業価値向上につなげています。
また、当社知的財産部門が国内外グループ会社の知的財産専門機能を担い、主たる知的財産権の管理・活用、模倣品の排除に取り組んでいます。
当社はハミガキ分野で国内No.1の特許保有数を誇り*、むし歯予防においても数多くの特許発明を製品に活用しています。「大人のむし歯」とも呼ばれる根面う蝕は、高齢化や歯周病に伴う歯肉の退縮によって、歯の根元にエナメル質よりも脆弱な象牙質が露出することで進行します。
当社は、う蝕予防に効果のある「フッ素」に、「ピロリドンカルボン酸」を加えることで、根面の象牙質をコーティングし、脱灰抑制やコラーゲン分解抑制の効果を持つハミガキを開発しました。この技術は、歯科医院で販売するハミガキ『Check-Up』で活用を始め、現在は市販歯磨剤きへと展開を広げています。本技術は、高齢化社会の口腔課題に応えるものであり、関連する発明(特許番号:第6474375号)、「令和4年度関東地方発明表彰 発明奨励賞」を受賞しました。
* FT=4C083CC41出願中+権利存続特許(2024年4月現在)
毎日の洗濯は、時に面倒で気が進まないものであり、洗濯を繰り返すことで起こる衣類の色変化にも多くの人があきらめを感じていました。当社は、『NANOX one(ナノックス ワン)』で洗濯にまつわる様々なニーズに応えることで、洗濯をする人が悩むことなく、洗濯をより前向きなものに変えていけたらと考えています。『NANOX one(ナノックス ワン)』には、高機能界面活性剤と高性能な酵素を配合し、さらに特殊ポリマーを新採用することにより、「高い洗浄・消臭力」と「衣類本来の色を保つ機能」を両立させることに成功しました。
この「ニオイ・汚れ・衣類の色変化を1本で全部断つ洗剤」というコンセプトを実現する技術は複数の特許で保護しています。
おしゃれ着用洗濯洗剤『アクロンスマートケア』では、新配合の再付着防止剤「アクロンスマートケア成分」が界面活性剤の働きをサポートするため、界面活性剤の量を大幅に減らすことに成功しました。少ない界面活性剤でも汚れをスッキリ落とせて、さらに汚れの衣服への再付着を防止します。すすぎ工程が不要になり、お洗濯の時間が半分になりました。水・電力、さらにCO2の排出量まで半分でお洗濯ができます。この地球環境にも優しい「すすぎ0洗浄」技術は組成特許、洗濯方法の特許で保護しています。
当社は創業以来、より良い習慣づくりに向けて、お客様の記憶に残る「音」を大切にしたマーケティング活動を展開しています。宣伝・広告活動の結果、お客様の高い認知や識別力を得たブランド名やキーフレーズの「音」商標登録数は国内最多を誇り、これは音と記憶とを結びつけるマーケティングが当社強みであることを表しています。
特許庁が提供する「事例から学ぶ 商標活用ガイド2024」や、子供向けサイト「とっきょちょうキッズページ」では、音商標の代表として『キレイキレイ』(商標番号:第5842092号)を紹介いただいています。
当社は歯みがき行動習慣化のために、天然ミントに拘ったオーラルケア製品の香味設計を行っています。生活者との「おいしさ」でのつながりの構築には、当社の強みである調香技術に加え、ミント農家や香料サプライヤー等、サプライチェーンのご協力が重要です。当社は、このサプライチェーン全体の活動を「MINT PRIDE」と名付け、当社ならではの独自取り組みとして商標権登録(商標番号:第6356636号)することにより、社内外関係者の一体感醸成(インナーブランディング)につなげています。
子どもたちの楽しい手洗い習慣を日本だけでなく、広くアジアに拡げるために『キレイキレイ』ブランド名や「ファミリーキャラクター」ロゴを各国で商標権登録しています。韓国では、当初は識別力のある言葉とは認められず商標権が登録できませんでしたが、ライオンコリアの営業努力や啓発活動により韓国特許庁に認識力を認めて頂き、権利化に成功しました。また、これら海外での商標権は、模倣品撲滅にも役立っています。
当社では、知的財産活動が幅広いスコープにわたることにより、特許法第35条(職務発明)に基づく実績報奨制度に加えて、多様な知的財産活動に貢献した従業員を広く表彰する「知的財産貢献賞」表彰制度を設けています。
第17回目を迎えた2023年度表彰では、特許解析や契約業務効率化、知財情報開示の充実等の多様な活動に対し、5件の組織部門・従業員を表彰しました。
知的財産部では、従業員の自己啓発意欲を高揚し、革新的ビジネスモデルの創出に知的財産及び知財情報を活用できる人材を育成することを目的に、自己啓発による「知的財産アナリスト認定講座」受講の支援を行っています。
2021年以降、研究開発部門から6名がアナリストに認定されました。研究開発拠点でのIPランドスケープ等*の活用に繋げます。
* 特許等の「Intellectual Property(知財)」と、景観や風景を意味する「Landscape」を組み合わせた造語で、知財情報解析を活用して知財経営に資する戦略提言を図ること
知的財産アナリスト資格取得者からの声
「知的財産アナリスト認定講座」で学んだ特許解析の手法を用い、競合や原料サプライヤーの技術動向調査等を行っています。今後もお客様に新しい価値を提供するべく、競争力のある技術・製品の創出に活用していきます。
「トイレ用の液体洗浄剤」特許が発明奨励賞受賞(2023)
トイレ掃除では、便器のフチ裏は洗浄ブラシが届きにくく、汚れも頑固で落としにくく、掃除方法に満足が得られていないことがわかりました。そこで、“こすらず洗い”と、“拭き取りやすさ”を両立する技術を開発しました(特許番号:第7170528号)。
この技術は、簡便にトイレ掃除ができる『ルックプラス 泡ピタ トイレ洗浄スプレー』に活用しています。なお、本発明は優れた発明として、公益社団法人発明協会主催の令和5年度関東地方発明表彰「発明奨励賞」を受賞しました。
「消臭・防臭柔軟剤」特許が発明奨励賞受賞(2023)
当社の生活者意識調査では、約6割の生活者が洗濯後の衣類のニオイ残りを感じており、特に体臭(皮脂・汗)を気にしている人が多いということがわかりました。そこで、高度分岐環状デキストリンを配合し、様々な臭気に対して優れた消臭・防臭効果を発揮し、さらに消臭・防臭効果が向上した技術を開発しました(特許番号:第6159988号)。
本発明は公益社団法人発明協会主催の令和5年度関東地方発明表彰「発明奨励賞」を受賞しました。
「高保湿タイプ液体皮膚洗浄剤」特許が発明奨励賞受賞(2022)
ハンドソープやボディソープでは、洗浄時の泡性能や洗浄力の維持と洗浄後の保湿力の両立が課題でした。そこで、すすぎ時に水に流されやすい保湿成分を、水に流されにくい「保湿成分複合体」に形を変化させることで保湿成分を肌に残す技術を開発しました(特許番号:第6845847号)。
これは洗浄時の泡性能とすすぎ後に保湿成分が肌にとどまる訴求を行う、ボディソープ『hadakara』に活用されています。なお、本発明は公益社団法人発明協会主催令和4年度関東地方発明表彰奨励賞を受賞しました。
「高吐出量トリガースプレーヤ」特許が発明奨励賞受賞(2021)
『ルックプラス バスタブクレンジング』に使用された広範囲にムラなく連続噴霧できる噴出器の特許(特許番号:第6726606号)が、公益社団法人発明協会主催の令和3年度四国地方発明表彰において「日本弁理士会 会長賞」と「実施功績賞」を受賞しました。
高吐出量の良好な噴霧を可能とすることで、生活者の浴槽洗浄の負担軽減に貢献しています。
本製品は特許権だけでなく、商標権、意匠権と複数の知的財産権を組み合わせた知的財産ミックスにより多面的に製品を保護しています。
「まがる・おれない安全ハンドル歯ブラシ」特許が発明奨励賞受賞(2020)
当社は、ハブラシのネック部分がしなやかに曲がることで、子どもが歯みがき中に万が一転倒した場合に口腔にかかる衝撃を分散できる乳幼児用ハブラシを開発し、『クリニカ Kid’s ハブラシ 0~2才用、3~5才用』に応用しています。本件特許(特許番号:第6591988号)は、公益社団法人発明協会主催の令和2年度関東地方発明表彰「発明奨励賞」を受賞しました。