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環境とともにTCFD提言に基づく情報開示

ライオングループのTCFDへの対応

近年、気候変動は喫緊の社会課題であり、企業経営においても将来の重大なリスクであると同時に、企業活動の新たな機会創出の可能性もあると認識しています。
当社グループでは、金融安定理事会(FSB)により設置されたTCFD提言への賛同を2019年5月に表明しました。また、同年10月~2020年1月にかけて環境省「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」に参画し、気候関連のリスクと機会が当社事業におよぼす財務的影響の評価に取り組みました。2022年には、事業・地域・製品群・サプライチェーンの面で分析範囲を拡大し、本格的なシナリオ分析を実施しました。その結果についてTCFDのフレームワークに基づき気候関連情報を開示しています。

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TCFD各項目の取り組み状況と今後の対応方針
TCFD推奨の
気候変動関連開示項目
ライオングループの取り組み状況
ガバナンス 気候関連のリスク及び機会に
係る組織のガバナンス
  • 気候変動リスク・機会は、サステナビリティ推進協議会傘下のE分科会より、同協議会(年2回開催)に報告され、必要に応じ、経営執行会議・執行役員会・取締役会にも報告される体制となっています。
  • また、気候変動による人々を取り巻く世界観の変化を事業機会とすべく、同協議会直下にワーキンググループを設置して機動的な検討を行っています。
戦略 気候関連のリスク及び機会が
組織の事業・戦略・財務計画に
及ぼす実際の影響及び潜在的な
影響
  • TCFDの提言に基づき、2030年・2050年において気候変動影響を受ける可能性が高い一般消費財事業及び海外事業の一部の国について、1.5℃・4℃の2つのシナリオを用いて、シナリオ分析を実施しました。
  • 短・中・長期の気候変動リスク・機会を現在~2050年まで特定・評価し、事業・戦略・財務計画検討時に考慮しています。
リスク管理 気候関連のリスクについて組織が特定・評価・管理する手法
  • 事業に大きな影響を及ぼす気候変動関連のリスクと対応策に関しては、全社共通で管理する「共通リスク」に位置付けており、その取りまとめを行う経営企画部とE分科会が連携して、識別・評価・管理を実施しています。
    リスクと対応策はこちら
指標と目標 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標
  • 当社及び国内外連結子会社のCO2排出量(Scope1、2、3)について、Webサイトで開示しています。また、長期環境目標「LION Eco Challenge 2050」における、2050年に向けた取り組み「脱炭素社会と資源循環型社会の実現」の方向性と、2030年時点のCO2排出量、石化由来のプラスチック使用率、水資源使用量を指標とした目標を開示しています。温室効果ガス削減目標は、SBTイニシアチブの1.5℃認定を取得しています。
    ニュースリリース:ライオンの温室効果ガス削減目標が
    SBTイニシアチブの認定を取得

シナリオ分析の概要

  • 2030年、2050年における一般用消費財事業(オーラルケア、ビューティケア、ファブリックケア、リビングケア、薬品の各分野)、海外事業(中国・タイ)について、産業革命比で2100年までに世界の平均気温が1.5℃・4℃上昇することを想定したシナリオを用いて、シナリオ分析を実施しました。なお、使用したシナリオのうち代表的なものは以下のとおりです。

    移行リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ:IEAによるNZE、STEPS

    物理的リスク・機会の分析に使用した主要シナリオ:IPCCによるRCP1.9、8.5

  • 分析の過程では各シナリオに対して、気候変動に関連するリスク・機会を洗い出し、事業への影響を定性的に検証後、定量的なインパクト額を試算し、大・中・小の3段階で評価しました。その結果、事業への影響が大きいリスクとして「炭素税の導入」「原料価格の上昇」、機会として「サステナブル商品の市場拡大」を特定しています。また、IPCC AR6等最新の文献を調査し、人々の生活を取り巻く世界観が気候変動に伴いどのように変化するかを想定することで、新たな事業機会検討の材料にしています。
【ライオングループの主要な気候変動リスク・機会】
リスク・機会項目 影響※1
概要 4℃ 1.5℃

炭素税の導入(Scope1,2,3)
  • 各国政府での排出権取引の本格的な導入や炭素税の適用により、工場の操業コストが増加
  • Scope3も含め炭素税がかかることで、原材料調達コストが上昇する
※2
原料価格上昇 化石燃料由来
  • 排出権取引の本格的な導入や炭素税の適用により価格上昇
パーム油由来
  • パーム油規制強化や認証油使用増加によるコスト上昇
植物由来(とうもろこし、ミント等)
  • 収穫量の減少による価格高騰
材料・包材
価格上昇
プラスチック由来
  • プラスチック使用に関する規制により価格上昇
アルミ由来
  • 自動車の軽量化規制等により、鉄からアルミニウム等への代替が進み価格高騰
森林資源由来
  • 森林火災や森林保全・森林伐採規制による価格上昇
サステナブル商品市場拡大
  • 顧客のエシカル消費に対する意識向上にともない、節水・節電商品を含むサステナブルな商品の需要が拡大


平均気温の上昇
  • エネルギーコストや労働者への負担が増加することにより操業コスト・人件費が上昇
  • 気温上昇により洗濯関連製品、感染症増加により衛生関連製品・サービスの売上が増加
降水・気象パターンの変化
  • 洪水や水ストレスの増加により、自社及びサプライヤーの操業に影響が生じ対応コストが増大。また、安定供給が果たせない場合、信用力低下の可能性
異常気象の激甚化
  • 異常気象の激甚化により、自社物流の遅延やサプライチェーンの分断が発生し収益が減少。また、安定供給が果たせない場合信用力低下の可能性

※1 リスク:赤字、機会:青字

※2 環境目標「LION Eco Challenge 2050」を達成できずCO2削減が進まない場合

シナリオ分析結果まとめ

  • 今回分析で使用した各シナリオへの対応はこれまでも進めていますが、変化へのレジリエンスを一層強化すべく経営努力を傾注していきます。
  • 4℃シナリオでは化石燃料由来の原料高騰が大きなリスクですが、既に植物由来原料への代替等、脱炭素化に向けた取り組みを推進しています。また、洪水や水ストレス等物理的リスクの増加についても、BCPの強化やサプライチェーンのデータ連携等の対応を進めています。一方、機会面では感染症予防や洗濯関連商品などの市場の拡大が想定されるため、関連する商品開発やサービスの強化等に向けた取り組みを進めています。また、感染症拡大のリスク増加に対しては、当社の強みを発揮できるオーラルヘルスやインフェクションコントロール領域での成長機会の探索を続けていきます。
  • 1.5℃シナリオでは、プラスチック由来・アルミ由来・パーム油由来の原材料・包材価格の上昇が大きなリスクですが、石化由来のプラスチック使用量の削減やパーム油・パーム核油誘導体のRSPO認証品の調達等、リスク低減に向けた取り組みを既に進めています。一方、機会面では、環境配慮製品の大幅な需要拡大が見込まれ、ライオンエコ製品の拡充等による事業の拡大が期待されます。なお、この取り組みにより当社のScope3の過半を占める使用・廃棄段階でのCO2削減にも寄与します。このほか、サステナブルファッションなど生活スタイルの変化に適合する技術開発の推進や、EV普及等、脱炭素交通の進展にともない必要となる導電性カーボンの供給拡大など、4℃シナリオ同様、さらなる成長機会の獲得についても検討しています。
  • また、現時点で定量的影響額が小さくとも、当社にとって大きなリスクとなる可能性がある項目(品質の高いミントの調達等)については、社会動向等をモニタリングしながら対応策を検討していきます。
4℃(成行)の世界観@2050年
図
1.5℃(脱炭素進展)の世界観@2050年
図

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