新製品の開発をする際、研究所の段階では少ない分量で開発を行っているため、それを工場のスケールに移行した途端、原料が混ざりきらなくなって中身が不均一になってしまったり、まったく異質なものになってしまったりといった不具合が生じます。そこで、設備や製造の条件を調べて、研究所にて組成が決定した新製品を実際の工場で大量に生産し、事業として成り立たせることが私の仕事です。
例えば、研究所で「原料1リットル分を1分間混ぜていた」工程も、工場での大量生産になると「原料10トン分を6時間混ぜる」といった工程に変わります。そうした時に「生産工程でどんな現象が起きそうか」を予測し、実験をしながら生産条件を決定していくのです。
研究職が「0から1を生み出す仕事」だとすると、私たち生産技術は「1を100にする仕事」だと言えると思います。「生産過程でどのようなファクターが製造を難しくしているのか」を推理し、そのファクターを取り除きながら、より効率的な生産体制を追求していきます。生産はメーカーの根幹であるため、責任は重大ですし多くの難しさが伴いますが、1を100にした結果の「社会に与え得るインパクトの大きさ」に仕事のやりがいを感じます。
私が日用品メーカーであるライオンに惹かれたきっかけは、日常生活のとある一コマにありました。トイレ用洗剤のラベルに記載されている内容物を見て、「各々の成分がどのように機能しているのだろう」と興味が湧いたのです。さらに、弁当箱を洗いながら、弁当箱に染み付いたニオイが気になった際も、「もっと洗浄力の高い洗剤があれば助かるな…」などとあれこれ考えるようになり、「もし私がより機能性が高い日用品を製造できれば、家族や身近な人がもっと心地よい毎日を送ることが出来るかもしれない」と感じ、ライオンに入社を決めた事を覚えています。
実際に、いち生活者として日常の中で感じる様々なストレスを反映しながら仕事に向き合っています。また、その結果として生まれた製品を身近な方々に使ってもらえる、そんなわかりやすい喜びを感じながら仕事ができています。自身が携わった製品の感想やフィードバックを直接聞けることは、誰にとっても身近な商材を扱っているライオンで働いているからこその大きなメリットだと感じます。
昨今、生活者のニーズの多様化に伴い、生産する製品の種類はますます増えているため、生産技術に期待される役割がさらに大きくなっている事を感じます。例えば近年は、工場内の製造データや、人の作業データなどを、デジタル技術を活用して取得し、分析・最適化することで品質や生産性の向上を図る「スマートファクトリー化」が進められています。見えにくい製造プロセスをシミュレーションを通じて可視化し、工場で収集したデータと比較することで、新たな課題や最適解を見出すといったチャレンジングな仕事も数多くあります。また、現在当社は「より良い習慣」を海外にも浸透させるべく、海外事業に注力しています。そのため、生産技術部門も、国内生産拠点にとどまらず、海外の生産拠点にも最先端の生産技術を提供していく必要があります。
このように、グローバル化やスマートファクトリー化を加速させているライオンの生産技術部門には、若手であっても、既存の枠組みを飛び越えた新たなチャレンジができる環境が確かにあると実感しています。
仕事をするうえで日々大切にしている事は、「周囲とのコミュニケーションを通して、各々の力を掛け合わせて最大成果につなげる事」です。「一人でできることは限られている。様々な個性や強みを持ったメンバーが集まっているからこそ、一人では到底生み出し得ない大きな成果につながる」。これは私が大学時代に先輩から言われた言葉ですが、社会人になって改めて、この言葉の重みを実感しています。
生産技術は、海外も含めて多くの製造関連部所と関わる部門です。部門内の連携にとどめていては生み出せない成果が、部門を飛び越えた連携によって生み出されるような瞬間を何度も経験してきました。「チームメンバーの総力で」という輪が今以上に広がっていけば、さらに良い製品開発が実現し、結果としてより多くの生活者の「より良い習慣づくり」に貢献できると信じています。
自身も周囲との丁寧なコミュニケーションを大切にしながら、他部門との「橋渡し役」となって、仕事の連携の輪をもっと広げていきたいと思っています。