私がライオンに入社を決めた理由は、マーケティングに力を入れている会社だと感じたからです。大学ではマーケティングを専攻しており、特に競合ひしめく日用品業界において次々とヒット製品を生み出しているその姿に、強い関心をもっていました。
入社直後の配属は営業部で、その後マーケティング色の濃い流通企画部門に異動となり、「台所用洗剤や住居用洗剤といったリビングケア製品を、店頭でどのように販売し、購買を促すか」という戦略を練る業務を担当していました。
製品をより多くのお客様の手に届けるための戦略を立案しているうちに、「いずれは製品を0から生み出し、育てていくマーケターとして活躍していきたい」という思いが強くなっていきました。同時に、マーケターとして活躍するためにはこれまでの業務経験や知識、独自の勉強だけでは足りないと感じ、「もっと体系的に学びたい」という意識が芽生えました。そこで会社の制度である国内留学制度を活用し、慶應義塾大学ビジネススクールへの入学を決めました。ビジネススクールでは経営戦略を専攻、2年間で経営学修士号(MBA)を取得しました。
ライオンで働く魅力の一つは、「自分がやりたいこと・挑戦したいことを応援してくれる組織風土」だと思います。「国内留学制度を活用したい」と周囲に話した際には、多くの方が全力で後押ししてくれたのを今でも覚えています。この経験から、ライオンは、社員が自らの意志で手を挙げたことに、正面から真剣に向き合ってくれる会社であると再認識しました。
現在、私は台所用洗剤『Magica』『クリスタ』と、調理関連品『リード』のブランドマネージャーを担当しています。ブランドマネージャーとは、ブランドの中長期的な成長戦略や事業収益を管理する、いわばブランドの責任者です。
私の仕事で最も求められるのが「意思決定」です。これは、言葉の字面以上に重責です。その決定一つで、部内のメンバーはもちろん、関連部門、取引先、ひいては生活者の習慣をも左右しかねません。
ここでビジネススクールでの学びが活きていると感じます。財務や会計など経営全般の習得した知識ももちろんですが、意思決定につながる「物事の捉え方・検討の仕方」を学べたことは私の大きな財産です。ビジネススクールの授業はほとんどがケーススタディであり、そこでは「複雑な課題をどのように捉え、整理するのか」「トレードオフが存在する中、解決策をどのように練り、判断していくのか」など、常に個人の意思決定が問われていました。その経験が、現在ブランド責任者として、日々意思決定を求められる中で役に立っていると感じます。さらに、自分とは全く異なる背景・立場・考え方を持った仲間との交流も、経営観点の視座を高める事に繋がりました。
国内留学制度を活用してMBAを取得した経験は、今の自分を大きく支えてくれています。
ビジネススクールを修了し、リビングケア事業部に異動となった1年目、私は台所用洗剤『Magica 速乾+』の開発に携わりました。この製品は、コンセプト設計の段階から目新しいものでした。それまでの洗剤は「食器を洗う」という行動に着目されていました。そのような中、我々は生活者の声に耳を傾け、多くの方が「食器を洗い、乾かし、拭き、しまう」までを「食器洗い」と捉えていることに気づいたのです。そこで私たちは、「洗った後の“乾かす~しまうまでのプロセスの短縮”」をコンセプトに据え、当社が過去に培ってきた速乾技術をさらに進化させた、「圧倒的に短い時間で水切れができる洗剤」を開発しました。食器を乾かす時間を短縮し、面倒なふきんで拭く手間を省けるという「生活習慣の変化」を実現させることができました。
食器洗いは「やりたくない家事No.1」とも言われます。それにもかかわらず、食器洗いの行動自体は、ここ数十年ほとんど変わっていません。生活者の意識や行動をさらに深掘りしていけば、生活者自身も気づいていない、当たり前になってしまっている不満がまだあると確信しており、だからこそ、今こそ、「より良い習慣づくり」を実現していける大きなチャンスだと捉えています。生活をより便利に、快適に、楽しく変えることに、もっと貪欲にチャレンジしていきたいです。
仕事をするうえで、理想を描いても、なかなか到達できずに思い悩むことも少なくありません。特にライオンは、パーパスに「より良い習慣づくり」を掲げ、今まで無かったところから新たな習慣や価値観をつくろうとしている会社ですから、そこに多くの葛藤があります。
しかし、そんな私たちのビジネスにおけるブレークスルーのほとんどは「日々の生活の中」に隠れています。「課題や困難に真剣に向き合う」といったスタンスで生活していれば、ふとアイデアや解決策が浮かんでくる瞬間が幾度となく訪れます。
これは「いつも仕事上の課題ばかり考えて生きる」というわけではありません。真剣に向き合うとは、すなわち熱量だと考えています。私自身も熱量をもって課題に向き合うことで、プライベートでクールダウンしている時、例えば趣味に没頭しているときでも、何かの拍子にそれが仕事上の課題とバチっと繋がって、考えもしなかった解決の糸口が見える瞬間を何度も経験してきました。
マーケティングは、困難が絶えない仕事だと感じています。しかしその分、解決できた時のやりがいの大きさは、何にも代えがたい仕事です。
今まで無かったところに、新たな習慣が生み出せた時の喜びを、ぜひこれからライオンの仲間になる皆さんにも味わっていただきたいです。