サステナビリティ重要課題8 人権の尊重
目標
「ライオン人権方針」に沿って、事業活動によって影響を受けるすべてのステークホルダーの人権を尊重します。
指標(2030年) | 重要な人権問題に対する人権デューディリジェンスの対応実施率⇒100% |
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指標の進捗 (2023年実績) |
人権デューディリジェンスの対応実施率 ライオングループ:100% サプライヤー:87% |
2030年までの グローバル共通施策 |
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ライオングループは、事業活動を通じて引き起こす、または助長する、あるいは製品やサービスと直接結びつく人権への負の影響を特定、防止・軽減し、どのように対処するかということに責任を持つために、部所横断的組織である人権に係る検討会を主体として、自社従業員・派遣社員、ビジネスパートナー、サプライヤー、コミュニティ、消費者・生活者、人権に関連する外部有識者や団体等自社の事業に関わるステークホルダーとの対話を行いながら、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、以下のプロセスで人権デューディリジェンス*を推進しています。
当社グループの事業活動や社会情勢、人権の状況等の変化に伴い、人権リスクが変わりうることを認識し、人権に対する影響評価を含めた人権デューディリジェンスの各プロセスを継続的に実施することで、取り組みの高度化を図っています。
* 企業が人権を侵害するのを避け、侵害による被害者を救済するためにとるべき手段のこと
当社グループは、日用品の開発、製造、販売を主な事業としています。日用品の中でも、特に洗濯用洗剤等、洗浄製品を多く扱っています。これらの洗浄成分である界面活性剤は、植物原料であるパーム油・パーム核油の誘導体を素原料として使用しています。パーム油・パーム核油は、マレーシア、インドネシアが主要な生産地であり、国や地域、品目として人権リスクが相対的に高く、人権を含めた持続的な調達に関して問題をはらんでいることを人権に関する国際的な組織やSedexが提供するデータ等から特定しています。
具体的には、パーム農園の労働者等脆弱な立場に置かれ得るステークホルダーに対する過重労働、児童労働、違法伐採(焼き畑)による煤煙被害等の人権リスクが想定されます。 日用品の個装及び移送のための段ボール等には包装材料として多くの紙・パルプを使用しており、不十分な森林管理等に起因する環境に関連する人権リスクが想定されます。また、パーム油・パーム核油や紙・パルプ以外にも、製造プロセスにおいては、原材料調達等で多くの原材料メーカーや生産委託先の協力を得ています。人権を含めた持続的な調達に関する取り組みが十分ではないサプライヤーとの取引を要因として、調達における人権リスクが顕在化した場合には、製品供給や当社グループのレピュテーション等への影響に関する事業リスクに繋がる可能性があります。
また、日用品の企画・製造・販売においては、企画、調達、研究、生産、販売、管理等、バリューチェーン上に自社従業員や派遣社員、ビジネスパートナー等ステークホルダー間に国内外で多くの接点が存在しているために、人種や性別による差別やハラスメント、過重・長時間労働等の人権リスクを引き起こす、または助長することも起こり得ます。事業構造の変化により生活者・消費者との接点を拡大する際は、個人情報の管理等プライバシーの権利に対してより一層の注意を払う必要があります*。
* 「国際労働組合総連合(ITUC)Global Rights Index」等を参照
当社グループが事業展開している国や地域におけるバリューチェーン上で起こりうる顕在的・潜在的な人権リスクをより明確にするために「国際人権章典」「国連グローバル・コンパクトの10原則」「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」「子どもの権利とビジネス原則」をはじめとする人権に関する国際的な規範から、当社グループの事業活動で想定される人権課題*を以下の通り抽出しました。
人権課題の抽出にあたっては、ビジネスと人権を取り巻く社会的な情勢や国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP)、日本経済団体連合会が策定した人権に関するガイドライン及び外部有識者からの助言を参考にしています。
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抽出した人権課題
強制労働 住居及び移転の自由 児童労働 教育を受ける権利 若年労働者の権利 労働組合を組織する権利・参加する権利 同一労働同一賃金 採用における差別 雇用条件・待遇における差別 機会・評価における差別 母性及び児童の保護 ハラスメント 思想・宗教の自由 過重労働・長時間労働 休息・余暇を持つ権利 適正な報酬・生活資金の支払い 労働の自由・雇用保険 安全かつ健康的な作業条件を享受する権利 生活水準及び健康の教授に関する権利 社会保障を受け取る権利 プライバシーの権利 地域住民の生活に及ぼす影響 水資源へのアクセス 環境マネジメント 消費者の安全と健康
抽出した当社グループの事業活動で想定される人権課題について、ステークホルダーである自社従業員・派遣社員、請負を含むビジネスパートナー、サプライヤー、先住民を含むコミュニティ、消費者・生活者における顕在的・潜在的な影響評価を実施しました。
「国連指導原則報告フレームワーク」等の人権に関するガイドラインを参考に、人権侵害の規模、人権侵害が及ぼす範囲、発生可能性及び救済可能性を評価項目としています。人権に対する影響評価に際しては、各ステークホルダーの人権課題に紐づく部門の責任者が「人権課題チェックシート」にて行った結果を基にリスクマップを作成し、人権に係る検討会で事業や社会の変化、外部有識者を含めたステークホルダーの意見等から総合的に判断し、自社にとっての優先課題(顕著な人権課題)を特定しています。
人権に対する影響評価により特定した自社にとっての優先課題(顕著な人権課題)に対しては、各人権課題への負の影響を防止・軽減、または是正するために以下を実施しています。
自社にとっての優先課題 (顕著な人権課題) |
自社にとっての優先課題に対する負の防止・軽減策と進捗状況 |
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サプライヤーにおける強制労働、児童労働、若年労働者の権利、過重労働・長時間労働、安全かつ健康的な作業条件を享受する権利、住居及び移転の自由、教育を受ける権利、労働の自由・雇用保障 |
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サプライヤー周辺のコミュニティにおける水資源へのアクセス、地域住民の生活に及ぼす影響、環境マネジメント |
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ビジネスパートナーにおける過重労働・長時間労働、ハラスメント |
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消費者・生活者におけるプライバシーの権利 |
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当社グループは、人権を含む企業倫理に反する問題に適切に対応するため、苦情処理メカニズムとして、社内外の通報制度「AL(オールライオン)心のホットライン」を設置しています。
本システムでは、通報者として自社従業員だけではなくビジネスパートナー等社外ステークホルダーも含んでおり、通報者、被通報者のプライバシーは保護され、調査内容の秘密の厳守が保証されます。また、すべての案件は匿名の通報等を除き、すべての通報者へフィードバックを行っています。
本制度の仕組み、相談・通報内容等の詳細は当社ホームページの下記よりご参照いただけます。
社内外通報制度「AL心のホットライン」の設置それぞれの負の影響の防止・軽減策は質的または量的な指標を設定し、人権に係る検討会事務局が年2回モニタリング結果をS分科会に報告しています。
人権の取り組み状況等については、随時自社ホームページ等で開示しています。
当社グループでは、「ライオン企業行動憲章」「ライオン人権方針」の浸透と定着を図るため毎年国内の全従業員(パート社員を含む)を対象にe-ラーニングを通した人権についての研修を行っています。
また、毎年国内全従業員(パート社員を含む)を対象に「コンプライアンス意識調査アンケート」を行い、人権を含むコンプライアンスに関する意識や業務における行動について定量的・定性的に把握するとともに、結果を部門毎にフィードバックすることで、従業員の意識向上やより良い環境づくりに繋げています。
また、人権デューディリジェンスを推進するにあたり、取締役・監査役・執行役員、人権に係る所管部門の責任者等と外部有識者を含め、ビジネスと人権についての勉強会及び意見交換を行い、経営層の理解を深めています。
「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」のヒューマンライツ・デューデリジェンス分科会のワークショップ等、外部イニシアチブにも参画し、人権を取り巻く社会情勢の理解を図っています。「日本化粧品工業会」においては、「サステナビリティ指針」の策定に参画しており、2023年には当社の従業員が所属する「社会課題対策部会」にて消費財における広告表現に関する会員向けセミナーを企画・開催する等、企業における人権を含めた社会の持続可能な発展への取り組み実現に積極的に働きかけています。
サステナビリティ重要課題について事業を展開する国や地域で配慮すべき事項を外部有識者と抽出した「サステナビリティ状況共有シート」を活用し、各海外関係会社に人権に対する影響評価で特定された自社にとっての優先課題に関する事項を含めたヒアリングを行い、防止・軽減、是正策や対応状況を把握するとともに、進捗をモニタリングしています。
海外関係会社と取引のあるサプライヤーについては、人権・労働を含めた当社グループの調達方針に関わる事項について「ライオングループサプライヤーCSRガイドライン」セルフチェック及びSedexを活用し、サプライヤーによる影響評価を実施しています。
当社グループは、「原材料調達」「当社での活動」「お客様による使用」のそれぞれのバリューチェーン上で起こり得る潜在的な人権リスクを低減する取り組みを以下の通り行っています。
当社グループは、原材料調達における人権侵害防止の取り組みとして、「調達基本方針」にて法令遵守、環境保全、人権尊重等サステナビリティに関する当社グループの姿勢を明確にし、お取引先と取り組みを進化させています。
また、当社グループの主要な植物原料であるパーム油、パーム核油において、持続可能な調達を推進することが重要であると認識し、取り組みを進めています。
予防・軽減策 | 目標・進捗(2023年) |
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第三者認証を受けた原材料の調達→RSPO、FSC認証品の調達 |
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サプライチェーン上で社会・環境問題が発生した際に、解決能力のあるサプライヤーとの取引推進→森林破壊ゼロを支持するサプライヤー |
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予防・軽減策 | 進捗(2023年) |
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サプライヤーのサステナビリティ活動に関する定期的なリスク評価の実施 | 当社を含む国内グループ会社及びライオンコリア、タイライオン、サザンライオンのサプライヤーに対して、「ライオングループ サプライヤーCSRガイドライン」に基づくセルフチェック及びSedexを活用し、サプライヤーにおけるサステナビリティに関するリスク評価を実施 |
高リスクサプライヤーの特定 | 「ライオングループサプライヤーCSRガイドライン」基づくセルフチェックにおいて、高リスクサプライヤーの基準を設定 |
高リスクサプライヤーに対する監査の実施と改善計画の策定 | 高リスクサプライヤーなし |
*2024年3月末時点
当社グループは、お客様に製品を安心・安全にご使用いただくための取り組みとして、製品開発の各段階での業務プロセスや品質保証を定めた規程である「製品マネジメントシステム」を整備しています。また、医薬品医療機器等法、景品表示法、健康増進法等の関連法規遵守はもちろんのこと、「表示作成マニュアル」を定め、お客様の視点を考慮し誤解や不快感を起こさない、正確で節度ある広告・宣伝を行っています。
マレーシアやインドネシア等多くのイスラム教徒が住む国や地域においては、イスラム教徒の人々が安心して製品を使用できるようにハラール認証*の取得に取り組んでいます。
*ハラール認証の基準をクリアし、ハラールであると認められた製品等にマークを付与する制度。販売の際は、各国のハラール認証機関から正式に承認を受けた認証団体が発行したハラール認証書が必要