ビジネスアーキテクト
私は社内の業務プロセス再構築と業務改善を担うビジネスアーキテクトとして、SCM(サプライチェーンマネジメント)部門の担当者とともに、基幹システムの有効活用やサプライチェーン業務改革に取り組んでいます。
ライオンでは2022年5月より新しい基幹システムを稼働させました。その目的の一つに「経営・販売・生産などのデータを一気通貫でつなぐこと(ワンナンバー化)」があります。これは部門ごとに別々の計画を立てたり、それぞれで計画を修正したりするのではなく、全社で1つの計画をもとにオペレーションしていくというものです。ただ、システムはあくまでもツールであり、導入するだけでSCMが改善されるわけではありません。特に稼働直後はシステムに対する習熟度が上がらず、業務負荷が高まったり、オペレーションミスへの対応に時間が取られたりするなど、マイナスの効果も見られたため、それらを早期に挽回してより高いレベルの業務オペレーションを実現する必要がありました。
そこで2023年7月より、在庫の適正化に向けた新たなプロジェクトが立ち上がりました。ERP(基幹システム)は仕組み上、生産計画を立てる際に原材料の使用見込みと発注計画も自動で計算されるため、計画を新しく立てる場合も、変更する場合も、さまざまな点に注意を払う必要があります。たとえば、初期の見通しから販売数量の増減があった場合、可能な範囲で生産計画を見直して最適な生産量に調整しますが、生産計画を変更するためには原材料調達や工場の勤務シフト管理など複数の要素を考慮する必要があり、非常に難易度が高いのです。「生産計画の見直しは何日前であれば無理なく対応できるのか」など、現場での活用シーンを考えながら、システム面で支援すべき部分を洗い出していきました。
プロジェクトの企画を担うのは本社部門のメンバーですが、実際に現場を動かしていくのは工場のメンバーです。工場で業務改善を進めていくためには何が必要なのか、現場でどのように動いてもらうべきなのかを意識しながら、システム設計を行いました。
生産計画の柔軟化については、従来の計画立案サイクルの中間でもう一度計画を立てることとし、計画立案の頻度を倍にしました。原材料のバッファ確保に向けては、原材料サプライヤーとコミュニケーションを取っている購買部門や工場と相談し、通常の生産で必要な原材料の確保に加え、余剰分を別途調達できるようにサプライヤーに働きかけてもらいました。ただいずれの変革も、これまでの業務に付け加えて新たな対応が必要となり、現場での負荷増や人員不足などへの懸念が生じることは容易に想像できます。
このような状況を受け、現場の負荷を軽減するため、現状は数多くのマニュアルでの作業を必要としている生産計画立案をサポートするツールの導入を進めています。このツールが展開されていけば、販売部門での需要の予測に基づき、在庫計画や工場の設備能力、勤務シフトなどを加味して最適な生産計画の自動立案ができます。ただ、こういったツールを各工場の実態に合わせ正しく設定をして使いこなすのは非常に難易度が高く、導入するだけで成果がでるわけではありません。数多くのパラメータが正しく設定されていないと、自動立案された計画では実際の生産実態にそぐわないことすらあります。生産する品種やプロセス・機器の変更が生じた際に必要なパラメータをタイムリーに変更するなど、常に妥当な生産計画を立案できるようにメンテナンスを継続する必要があるのです。私たちは、このようなツールを使いこなしてもらうための伴走型サポートにも注力しています。
私自身は2018年に新卒でライオンへ入社しました。大学では文学部で歴史学を専攻していたため、デジタルとは縁遠く、入社時点では営業職志望でした。そんな私が初期配属でシステム部門に携わることになり、当初は戸惑いもありましたが、OJTや先輩への質問で知識を吸収したり、自分なりに参考書などで学んだりして、ビジネスアーキテクトとしてのスキル習得に努めてきました。今も事業部門や生産部門とフランクに会話することを心がけ、分からないことがあれば積極的に聞くようにしています。ライオン社内の風通しの良い風土にも大いに助けられていると感じます。
近年では社会全体で生産部門のDXが注目されています。ライオンの生産部門にも、効率化できる余地がまだまだ残っているはずです。「現場の業務を変えることで誰かを幸せにする」ことを自分自身のミッションと位置づけてからは、関係者から時折かけてもらえる感謝の声に大きな喜びとやりがいを覚えるようになりました。
入社以来、私はシステムの側面からSCM業務改革の取り組みを行ってきましたが、今後はSCM関連の業務の現場で、実際に生産管理に携わり、現場の視点をより深く身につけたいです。現場の業務は私が知っている以上にずっと幅広く、奥深いと思っています。そこに身を置いて手触り感のある経験を重ね、再びデジタル活用の業務改革を担うことで、社内SCMシステムの第一人者になりたいと考えています。